コロナによる為替状況考察(6/6)

新型コロナウイルスによるパンデミックによって世界で消費行動自粛を余儀なくされ、経済停滞をもたらしました。この影響から為替レートは過去最大規模で変動しました。

 

今回は私が日常的に取引しているペア通貨の変動要因について考察していきたいと思います。

 

目次

 

 

ドル/円

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  1. ドル円のチャートからみて、大きな動きは2月20日あたりからと言えます。ドル/円は2月20日で112円台まで上昇していました。これは新型コロナウイルスがアジアで発生し、アジア圏の経済に不安要素があると判断し、投資家たちが米国、欧州へ資産を移動させたことによるものと考えます。
  2. しかし一転、既知のとおり世界中に新型コロナウイルスが拡大していくことになります。米国でも感染拡大が認知され、2月下旬以降ドル売りが加速します。一旦は上昇していた為替レートが急に売られることになるので損切り決済も多くなり、さらなる下落加速を招いていると言えます。
  3. FRB(連邦準備理事会)が緊急の金融緩和を打ち出します。しかしドル安は感染拡大によるもので、市場の経済不況によるものではありません。感染リスクが解消されなければ市場が好転することはないと捉えられ、ドル高にはなりませんでした。むしろ金融緩和をもってしても歯止めが利かない状況はさらなる下落を生んだとも考えられます。
  4. 3月10日を境に反転して上昇していきました。これはいわゆる「有事のドル買い」です。ここまではリスクオフでドルが売られてきましたが、各国の企業や金融機関が現金化を進めてきました。世界主要通貨で流動性の効くドルを求める動きが発生したのです。先行き不透明な状況が続いたため、この現金化の勢いはものすごく、ほとんど全戻しに至りました。
  5. その後徐々にドル売りになっていきます。世界中で株が売られたため、株の価格は底打ちになっています。投資家としてはこれ以上下がらないと踏んで、再度現金化したドルを株に変えていきます。特に今まで投資をしてこなかった初心者もここが始め時だと買いだしたケースが大きいと思います。多少投資の世界をかじって知識があった人は対照的に2番底が来ると想定してなかなか買えなかったのではないでしょうか。
  6. そして5月に入ると感染者数が落ち着きだし、自粛ムードに限界が見られだしてきて経済再開の見通しが立ってきました。3月、4月のようなパニックは想定済みと捉えられ、今後はアフターコロナ復興期待の相場に転換するのではないかと楽観視的なリスクオンムードになってきたと考えます。これが現在(6月6日時点)まで続いていると考えています。

 

ユーロ/ドル

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  1. 2月にドイツ政局の不安感によりユーロが売られています。ドイツはEU経済をリードする存在です。理由は2つあると言われ、メルケル首相の後継者の白紙化とチューリンゲン州において極右政党の支持を得た州首相が誕生したこと。これらによりEUの中で独り勝ちと言われてきたドイツの今後の意向が不安視され、ユーロ自体が売られることになりました。また、新型コロナウイルスへの不安感から有事のドル買いも発生しています。
  2. この最中、新型コロナウイルスが欧州でも流行してゆき、感染拡大となりました。世界主要通貨のドルの売りおよび緊急金融緩和で加速し、為替レートは上昇しました。
  3. 3月11日にWHOからパンデミックが宣言されると今度は一転、リスクオフに傾向が強まり、企業や金融機関のドルへの現金化が発生しました。この勢いはものすごく間近安値の08を下回っています。
  4. そして現金化に行き着いたところで今度は底打ちだと世界が認識し、株が再度買われだします。よってドル売りの流れです。
  5. しかし、感染拡大は英のジョンソン首相にも至りました。これによって欧州圏への不安感が再度現れ、ユーロ売りが起こっています。
  6. その後は停滞を続けていましたが、欧州委員会新型コロナウイルス感染拡大からの復興のための基金を含む提案を発表しました。復興基金の規模は7,500億ユーロで、うち5,000億ユーロは返済不要な補助金(grant)、2,500億ユーロが融資(loan)のかたちで加盟国を支援するとされています。欧州が総勢力で経済対策を行う方向性が示され、一気に上昇しました。これが現在まで至るところです。

 

ユーロ/円

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  1. 新型コロナウイルスによる影響は3月に入ってから見られました。世界2番目の取引量であるユーロが売られ、リスクオフで買われる円が買われています。感染が世界に拡大すると不安感が高まったときに一気に動きを見せていますが、世界全体規模の事態であったため、有事のドル買いによってユーロ/円の動きはクロスドルより大きくありませんでした。
  2. しかし、英ジョンソン首相のコロナ感染以降は欧州圏の不安感から下落傾向が見られました。リスクオフの円買いも少なからず影響したと考えます。
  3. そして欧州委員会新型コロナウイルス感染拡大からの復興のための基金を含む提案を発表したことで、ユーロ買いが顕著になり、一気に現在まで上昇しています。

 

 

 

結論

世界の主要3通貨の動向を考察しました。

現在(6月6日)で注目すべきポイントとして、

  1. 欧州委員会の復興基金提案によるユーロ高
  2. リスクオンの株買いによるドル安

が相場を大きく動かしていると考えます。

 

今後の動きとしては、感染第2波のリスクを想定しておかなければならないでしょう。世界各国で自粛解除になってきており、感染拡大再熱の可能性はあります。また、欧州委員会の復興基金は期待も高いですが、オランダ・オーストリアデンマークスウェーデンが反対を表明しており、期待が後退する恐れも秘めています。

 

以上、いずれの通貨ペアも急伸した動きを見せていますが、反落リスクを抱えながら推移していると考えます。特に6月5日の米国雇用統計では予想を大きく上回る好材料であったため、今までの株高に加え、ドル高の兆しを見せています。ドル/円、ユーロ/ドルの急な動きに要注意です。